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ラミレジィってどんな魚?

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アクアリストの多くが思い浮かべるドワーフシクリッドと言えば、ラミレジィでしょう。「ドワーフ」というのは小型種につく名称ですが、カラフルで可愛らしいその姿を見てしまったら、もう飼いたくなってしまうのは確実です。熱帯魚の中でも「花形」と言われるシクリッドですが、シクリッドの魅力にとどまらず、熱帯魚の魅力という広い意味での楽しみを教えてくれるラミレジィ。そんなラミレジィをご紹介します。
ラミレジィの特徴
ラミレジィの原産地はコロンビア、ベネズエラにまたがるオリノコ川、メタ川水系です。現在流通するものは養殖個体がほとんでですが、日本では国産個体や、東南アジア養殖個体が流通しています。価格も手頃で性質も比較的温和なことから、多くのアクアリストに人気があります。全長は5㎝±で、メスのほうが小さい特徴があります。
/ラミレジィの生態
他のシクリッドと同じく、複数でラミレジィを飼育しているとペアを組むようになります。ペアは産卵すると、卵から稚魚の世話までしますが、必ずしも繁殖が成功して親子が仲良く泳ぐ姿を見れるわけではありません。どうしても繁殖が上手くいかない場合は、人工孵化・飼育をすることになります。
ラミレジィの種類(品種)
野生のラミレジィから始まった改良。ドイツ・オランダ・チェコなどのヨーロッパブリードから始まり、中国からマレーシアなど東南アジアでの養殖が盛んになりました。現在は日本国産の改良品種もいます。そんなラミレジィの品種を見ていきましょう。
ミクロゲオファーガス・ラミレジィ
これは現在のラミレジィの名称です。WILD個体(現地採集個体)とブリード個体(養殖個体)がいますが、流通している個体のほとんどがブリード個体になります。WILD個体は入手困難です。
価格700~1000円程度
入手難易度☆☆☆☆
オランダラミレジィ
コロンビア産のラミレジィを、オランダのルイネマンズ・アクアリウムが世界各国に輸出していたのが始まりで、このコロンビア産のラミレジィをオランダで盛んに養殖したものが現在のオランダラミレジィにあたります。現在の日本での流通は、日本国産のオランダラミレジィが多いです。
価格700~1000円程度
入手難易度☆
ドイツラミレジィ
オランダラミレジィと同じ経緯で作出されました。違いは生産国がドイツだったというだけで、元はコロンビア産ラミレジィが始まりです。オランダラム・ドイツラムの両方に見られる特徴は、東部にある黒点模様と、背ビレと体側部にまで及ぶ黒い模様です。現在の日本では、日本国産のドイツラミレジィの流通が多いです。
価格700~1000円程度
入手難易度☆
/バルーンラミレジィ
バルーンというのは、脊椎骨の1つ1つが小さく短くなることで作られる、短い体形のラミレジィに付けられる名前です。見た目が丸いので可愛らしい特徴がありますが、通常の体形ではないので、健康面や他魚からの攻撃を受けていないかなど、通常より気をつかって観察するのがお勧めです。どの品種のバルーンなのかとか、又はロングフィンの特徴などもプラスした品種であれば、価格が高くなります。
価格700~2600円程度
入手難易度☆☆
ブルーダイヤモンドラミレジィ
この品種で言えばコバルトブルーラミレジィなど、流通名が1つではない魚種はラミレジィの他にもよくいます。ラミレジィは青赤黄黒などの色を持っていますが、この品種は体の多くをブルーが覆うように改良されたラミレジィです。
価格700~1000円程度
入手難易度☆
その他のラミレジィ
その他にもラミレジィの品種がいますが、あまり見かけることができないものもいるので、ここでまとめて品種名などご紹介しておきます。例えば、ドイツラムやオランダラムなどを、ゴールデン体色に改良した品種や、ロングフィンに改良した品種もいます。
例としては、ゴールデンバルーンラミレジィ、コバルトブルーバルーンラミレジィロングフィンなどですが、これらは普通種よりは少ないですが流通しています。その他では、特に入手困難なラミレジィとして、日本で作出されたジャパンラミレジィ、レインボーラミレジィなどもいます。
/ラミレジィの飼育について

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適切な管理をすれば、一般熱帯魚と変わらない管理で飼えるラミレジィですが、脆さも併せ持つ熱帯魚でもあります。次は水槽設備など、環境について見ていきましょう。
水槽サイズとフィルター
水槽サイズは、水量12ℓ位の30㎝水槽~水量60ℓ位の60㎝規格水槽まで使用できます。おすすめは、繁殖後もそのまま稚魚育成ができる60規格水槽です。60規格水槽であれば稚魚育成以外にも、他魚との混泳や複数匹のラミレジィを飼いたい場合なども適しています。
30㎝水槽でも繁殖はできますが、水量が少ない・スペースも狭い・ということで、早めの段階で稚魚の移動(水槽サイズアップ)が必要になりますし、他魚との混泳や複数匹のラミレジィを飼うのも難しくなります。
フィルターは、繁殖を考えている場合はスポンジフィルターを設置するようにしましょう。ただし、30水槽だとスペース的に、スポンジフィルターの設置が少し難しくなるかもしれません。
30キューブ水槽や45規格、60規格水槽の場合は、スポンジフィルターにプラスして外掛け式フィルターや上部式・外部式フィルターなど、何を設置しても構いません。
水温・水質
水温は27~28℃位と、シクリッドは他の熱帯魚と比べると高めの水温が適しています。水質は弱酸性が適しているとされますが、現在流通しているものは国産や東南アジア産のブリード物が多いため、WILD物のように水質にこだわらなくても大丈夫です。
水換え頻度や量は、水槽の水量と魚の大きさや匹数によって異なりますが、汚れやすい環境だとしても1週間に1回3分の1~半分以下の水換えで済むバランスにしましょう。余裕を持った環境にするなら、2週間に1回3分の1の水換えで問題なく飼えるバランスの水槽環境がおすすめです。
底砂
底砂はソイルが向いているとされますが、それも絶対条件ではありません。ソイルの良い点は、弱酸性の水質環境を作りやすいことがまず挙げられます。あと、水草と一緒に楽しむならソイルが向いていることになります。
しかし実際は、その他の砂利や砂でも飼うことはもちろん、繁殖もします。むしろ繁殖だけを目的にするなら、ベアタンク飼育(底砂を敷かない環境)もお勧めです。
レイアウト
これはもうお好みで自由にやって構いません。水草レイアウト重視にするのか、それとも魚重視にするのか。魚重視にするのであれば、イコール管理重視とも言えるので、管理の簡単な種類の水草を選んだり、レイアウト的にもシンプルにする方向になります。
レイアウトをシンプルにすることで水槽内の掃除もしやすくなるので、魚の管理を重視したかたちになります。アマゾン川にある種類の水草でレイアウトをするのも面白いと思います。
/ラミレジィの餌
ラミレジィは比較的に餌の選り好みはしないので、心配はそれほど必要としません。それよりも、外見的に美しく、内面的に健康なラミレジィを育てるために、餌について見ていきましょう。
おすすめの餌
餌は何種類かの餌を与えるのが良いです。何故かというと、栄養バランスを取りやすくなることや、特定の餌を食べ無くなったり入手できなくなった場合に問題になりにくいというメリットがあるからです。
次は皆さんも入手しやすい種類で、おすすめの餌についてお話します。
テトラ ブラインシュリンプエッグス
塩水湖で採集される乾燥卵で、塩水で孵化させて使います。生きたブラインシュリンプベビーは稚魚や小型魚だけではなく、ラミレジィなどのドワーフシクリッドの成魚に与える餌としてもお勧めです。嗜好性が高く栄養価に富み、色揚げ効果もあります。
ベンリーパック食品 冷凍赤虫
ベンリーパック食品の冷凍赤虫は板チョコ状なので、好きな大きさに割ることができるのがとても便利です。殺菌済みなのに価格もお買い得なのもとても良いところですね。嗜好性も高いです。
テトラ テトラディスカス
ディスカスフードは栄養価に富んでいるので、多くの魚にとって良いドライフードです。何を与えたら良いのか迷った時はディスカスフードですね。それくらい高いレベルで万能な餌です。
キョーリン ひかりクレストディスカス
高栄養で嗜好性も高く、色揚げ効果もある万能フードです。国産のキョーリン製なのも良いポイントです。内容量的にも多過ぎず、価格もお求めやすいのも良いですね。
キョーリン ひかりプレミアムメガバイトレッドS
海水魚の餌は全ての魚に良いと言える、まさにプレミアムなドライフードです。メダカや金魚のような淡水魚から淡水熱帯魚までお勧めできます。消化に関してもとても良い餌ですよ。
ラミレジィの色揚げにおすすめの餌
冷凍ディスカスハンバーグ(赤色揚げ用)
赤色揚げ用の冷凍ディスカスハンバーグは、早いもので3日で効果がわかっるものもあります。材料も主に牛ハツ(肉)からできているので、魚を大きくするのにも適しています。
テトラ テトラディスカスブリーダーレッド
高栄養で色揚げ効果も抜群なクランブル状のドライフードです。金魚用の餌よりも嗜好性が高く、水が汚れにくいのも良いポイントです。
キョーリン ネオプロス
熱帯魚用の嗜好性の高いフレークフードです。フレーク状で色揚げ効果を求めるかたにお勧めします。フレークフードは価格もお手頃なのも良いポイントですね。
キョーリン 咲ひかり金魚 艶姿 特級色揚
使ってみたくなる商品名ですよね。らんちゅうの品評会まえに仕上げる色揚げ飼料としてよく使われています。魚を大きくしたければ他の餌と併用するのがおすすめです。
餌の与え方
特別な餌の与え方は必要ないです。一般的な与え方と同じく朝と晩などに餌を与え、ラミレジィのお腹が餌を食べて膨らんでくればOK。気を配った方が良いこととしては、なるべく同じ時間に餌を与えることや、消灯時間の3時間くらい前には1日の最後の餌やりを終えることです。
消灯まで3時間も空ける余裕がない場合は、1時間でも2時間でも、なるべく時間を空けるようにしましょう。規則正しくするために、照明にはタイマーの使用を強くおすすめします。餌やりは、ラミレジィの観察をするためにもタイマー管理はあまりおすすめしません。
ラミレジィが餌を食べない時の対処法
ラミレジィの場合、餌を食べない原因として考えられるのは、病気や水質悪化や不適切な環境によるもの、他には混泳魚による攻撃などを受け続けることによるストレスなどが考えられます。
まずこれらの原因が無いか探りますが、複数の原因がある場合もあるので、それぞれのケースに応じた対処をするのが適切なことになります。
ラミレジィの混泳について
シクリッドとしては比較的に温和な性質のラミレジィですから、混泳も楽しみがあります。注意点も踏まえて混泳についても見ていきましょう。
同種・近縁種との混泳

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同種・近縁種との混泳の場合、小競り合いが見られ易くなります。シクリッドは群れの中で必ず強弱関係ができるのですが、これをなるべく回避するには水槽内スペースに対して過密や超過密になるくらいの匹数を飼う方法があります。
しかし過密飼育の場合、付随して水質悪化し易くなることから管理が大変になるということが起こるので、どうするかは飼育者次第になります。過密飼育にしなくても上手くいくケースとしては、水槽内に十分なスペースと隠れ家があるケースです。
/この場合、魚同士の接触をしにくくするために、逆に匹数はあまり入れない方が良いです。
他種との混泳

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他魚との混泳に関しては、まずラミレジィがやられてしまうような相手ではラミレジィを飼う意味が無いのでNGです。ラミレジィより小型だったり素早かったり、大人しかったり弱い魚種が混泳相手になります。ラミレジィを美しく飼ったり、繁殖させてみたいのであれば、ラミレジィが優位に立てる混泳バランスを作る必要があるのです。当てはまるものとしては、小型カラシンが特に混泳させやすいのでおすすめです。
エビとの混泳は不可能ではありませんが、エビが食べられるケースがあるので向いているとは言えません。貝も種類によっては混泳可能ですが、貝が食べられるケースも多いので、あまり向いているとは言えません。
ラミレジィの繁殖にチャレンジしてみよう!

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他の魚種もですが、特にシクリッドは繁殖にこそ1番の魅力があるのです。親子で泳ぐ姿を見たら、あなたもブリーディングの虜になること間違いなしですよ。
ラミレジィの繁殖はポイントを押さえれば難しくない
ラミレジィの産卵数は、数十~100個以上。シクリッドは基質産卵なので、ラミレジィも石や流木の面などに産卵しますが、なかには底砂を掘って作った窪みに産卵する場合もあります。そのため水槽内には平らな面がある石などを複数置いて、ラミレジィに産卵場所を選ばせるようにしましょう。
/シクリッドは27~28℃で産卵から孵化などが2~3日間隔で進みますが、ラミレジィもこれに準じます。そして稚魚が自由遊泳を始めたら、生きたブラインシュリンプベビーを与え始めましょう。しかし、せっかく産卵しても卵や稚魚が食べられてしまう、という人も多いと思います。ここからはラミレジィの繁殖について、ポイントを押さえながら見ていきましょう。
オスメスの見分け方
ラミレジィはオスの方が体が大きく、メスの方が小さいです。各ヒレも、オスの方が長く大きいです。メスは腹部が赤く色付いていますが、発情すると更にわかりやすく色付きます。複数匹いる環境であれば比較出来て判別しやすいですし、成魚であれば尚更わかりやすいです。
ペアリング
未成魚で雌雄判別ができない場合は、最低5匹以上から飼育すればいいですが、購入できるならもっと匹数がいると確実です。ペア販売しているラミレジィもいますが、単にオスとメスというのもいれば、繁殖経験のあるペアまで様々です。お店に長く在庫しているペアほど繁殖させ易い傾向がありますが、もし繁殖経験があるペアが販売していればラッキーですよ。
ラミレジィの繁殖その2. 産卵〜孵化後の稚魚管理
産卵後は水換えをしない方が無難です。何故かというと、水換え時のストレスや水質変化が刺激となって、親魚が食卵や食子をしてしまうことがあるからです。一方で、水質悪化や不適切な水質への変化が食卵・食子を招くケースもあるので、これが考えられる場合は水換えをします。現在は、水換えじゃなければ除去できない物質を除去してくれるリバースリキッド(ウォーターエンジニアリング)(他にはコトブキ ドクターバイオなど)もあるので、積極的に活用しましょう。
卵や稚魚の安全は、いかにペアにストレスをかけないかが大事になるのです。産卵時や問題が起きた時のphやkh、水温などの計測データを残しておくことで、どういう時に成功して失敗したのかが見えてくるので、記録をつけておくこともお勧めします。
ラミレジィの繁殖その3. 稚魚の育成
稚魚が自由遊泳を始めたら、生きたブラインシュリンプベビーを少しずつ与えて、食べるか様子を見ます。ちゃんと食べれば、稚魚のお腹がブラインシュリンプのオレンジ色に色付くことで判別できます。
どうしても食卵や食子で繁殖が上手くいかないというかたは、産卵したらペアと卵を離して人工孵化・飼育する方法もあります。早く親魚と離すほど孵化率や生存率などが落ちやすくなるので、どのタイミングで離すかは少し難しいところがあるとも言えますが、卵の段階で離すか、稚魚の段階で離すか、これも飼い主さんが経験を得ながら覚えていくしかありません。
ちなみに水換えに使う水は、一晩汲み置いた適温の水を使えば、一度に大量水換えをしても安全なのでお勧めです。
ラミレジィ飼育で気をつけたい病気

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生き物にとって病気は、切っても切り離せない永遠のテーマです。病気について詳しくなることが、生き物と接するうえで一番大事になってくるので、ここは力を入れてください。
エロモナス症
ラミレジィで見られやすい外見症状としては、ポップアイ(眼球突出)・腹部膨張(お腹が膨らむ)・立鱗(鱗が逆立つ)ですが、他にも体に血がにじんだり、体に穴が開いたりすることもあります。水質悪化で発症しやすくなるので、そこは注意しましょう。
カラムナリス症
体表粘膜(目の表面も含む)が白く目立ったり、口やヒレが痛んで溶けてきたり血がにじんだりします。エラがやられると、外見上は綺麗なまま死んだりすることもあります。
/シクリッド病(シクリッドエイズ)
強烈な感染症のような症状で、ラミレジィのような小型魚には厳しい病気です。特に、東南アジア産シクリッドと他国のシクリッドを混泳させた時にリスクが高くなるので、そのような混泳をする場合は要注意です。カラムナリス症やこの病気は混泳から3日目には発症するので、新魚導入して3~7日間くらいは特に注意して観察しましょう。
可憐なラミレジィはアクアリストを魅了し続ける

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ラミレジィは水質悪化にはモロい面があり、シクリッド同士の混泳では相性のことだけではなく、病気についてもリスクが高いので、この点でも弱さを見せます。累代繁殖による体質の弱体化も感じられるので、体質強化の改良が必要な魚種の1つだとも感じています。
しかしそれでもラミレジィの美しさは万人を惹きつけます。ビギナーからベテランまで、多くのアクアリストを魅了し続けるラミレジィ。是非あなたもラミレジィに魅了されてください。