石巻貝(イシマキガイ)のコケ取り能力とは?厄介なコケを退治!

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石巻貝(イシマキガイ)とは

石巻貝のコケ取り能力は?

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アクアリストにとって、知らない人が少ないくらい定番の石巻貝。水槽内のコケ取りとして有名ですが、意外と石巻貝の生態などを知らないという人もいます。ここでは、そんなアクアリウムの“お掃除屋さん”石巻貝について、生体や寿命、コケ取り能力などをご紹介します。

石巻貝の特徴

淡水から汽水域に生息する石巻貝は、その名のとおりカノコガイの一種で巻き貝です。4段に連なった大きな螺塔が特徴で、表面は黄褐色から緑褐色。小さな黒い三角形の斑紋が見られます。なお、石巻貝をはじめ、カノコガイの種類はひっくり返ると自力で起き上がることができず、そのまま死んでしまうので飼育の際は注意が必要です。

石巻貝の生態

石巻貝は熱帯から温帯域に広く生息しています。春から初秋にかけて、岩の表面などに卵が入った袋状の卵嚢を産み付け、約1ヶ月で孵化します。比較的水質のきれいな河川などに生息し、カワニナ同様にゲンジボタルやヘイケボタルの幼虫に捕食されることが多いです。

石巻貝の寿命

飼育環境や水質などにもよりますが、通常は野生下で寿命は1年ほどと言われています。弱アルカリ性を好むため、酸性寄りに傾いた水質ではさらに短命になります。なお、2年生きた個体もいるという報告もあります。

石巻貝のコケ取り効果はどれくらい?

一般的に観賞魚ショップなどで「コケ取り」として販売されている石巻貝。野生下では岩や石に付着した微細藻類を、歯舌を使って削り取るように食べます。なお、石巻貝の飼育数の目安ですが、60cm水槽で5匹程度と言われています。石巻貝はコケだけでなく、ほかの魚が食べ残した餌や死骸などの有機物も食べてくれるので、水槽の“お掃除屋さん”としてかなり優秀な貝です。

他のコケ取り生体と能力を比較!

石巻貝 VS レッドラムズホーン

こちらもコケ取り要員として有名なレッドラムズボーンですが、石巻貝に比べるとやや劣るといったところです。ただし、ほかの魚の食べ残した餌や死骸などの掃除能力はこちらに軍配が上がります。さらにレッドラムズボーンのフンにはバクテリアが繁殖するため、水質浄化にも役立ちます。ただし、ピンク色の毒々しい卵を水槽のガラス面に産み付ける性質があるため、増えすぎると観賞用としてはおすすめできません。

石巻貝 VS ヒメタニシ

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日本国内の河川に広く生息する巻き貝の一種ですが、このヒメタニシのコケ取り能力は決して高いとは言えません。ただし、ヒメタニシには石巻貝が持っていない高い水質浄化能力があります。水を直接吸い込んで、その水に含まれたグリーンウォーターや植物プランクトン、汚れを食べて、きれいな水として排出することができるのは石巻貝にはない特徴です。

石巻貝 VS ヤマトヌマエビ・ミナミヌマエビ

ヤマトヌマエビ・ミナミヌマエビも水槽の“お掃除屋さん”として有名で、特に高いコケ取り能力を持つ生体として人気です。石巻貝との比較では、同等のコケ取り能力があると言われていますが、好むコケの種類が異なります。石巻貝は糸状藻や珪藻を食べますが、ヤマトヌマエビやミナミヌマエビはアオミドロやヒゲ状藻も食べてくれます。共存が可能なので、石巻貝とこの2種のエビを同じ水槽で飼育するのもいいでしょう。ただし、ヤマトヌマエビは水草などを食べてしまうこともあるので注意が必要です。

石巻貝 VS カバクチカノコガイ

同じカノコガイの仲間であるカバクチカノコガイは、石巻貝よりも高いコケ取り能力を持ち、アクアリストからは“最強の生物コケ取り兵器”と呼ばれています。ただし、奄美大島など日本の南洋に生息する貝のため、流通量が少なく、高価も石巻貝よりも高価なのがネック。観賞魚ショップでは1匹400~600円ほどと、100円ほどの石巻貝に比べて数倍の値段の差があります。

石巻貝 VS ゴールデンアルジーイーター

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こちらも観賞魚ショップで水槽の“お掃除屋さん”として販売されているのを見かけることが多い熱帯魚です。アルジイーターの改良品種で、珪藻や斑点状藻を食べると言われていますが、よくコケを食べるのは稚魚のころまで。成魚になるとコケを食べなくなり、しかも気が荒くなってサイズも20cm近くに成長します。購入は慎重に考えたほうが良いかもしれません。その意味では石巻貝のほうがコンスタントにコケを食べてくれるぶん、能力が高いと言っていいでしょう。

石巻貝と相性のいい魚・悪い魚

石巻貝との相性がいいメダカ

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石巻貝は貝類なので、言うまでもなく混泳に関しては魚側の問題となります。魚を襲う肉食の貝類は非常に少なく、石巻貝もそのような習性はありません。そのため、あくまで石巻貝が捕食されないかどうかを考え、混泳させる観賞魚を選ぶとよいでしょう。相性がいいのはメダカなどの小型淡水魚。飼育環境が似ており、お互い干渉することがないためです。

 

ただし、前述したように石巻貝は弱アルカリ性の水質を好むため、酸性に傾いた水質で生きられるメダカなどとの水槽の場合、石巻貝は弱ったり・死んでしまうことがある点には注意です。また、フグの仲間やコイなどは石巻貝を食べてしまうので混泳には向きません。

石巻貝飼育の疑問を解決!

石巻貝は観賞魚ショップなどで安価・大量に流通して販売されているので飼育は容易と思われています。はたして本当でしょうか。石巻貝の飼育における疑問にお答えしていきましょう。

石巻貝に適した水温はどれくらい?

石巻貝の最適な水温は?

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一般的に石巻貝を飼育する水槽の水温は10~28℃と言われています。日本全国の河川に生息している貝なので、水温に対する適応能力は非常に高いです。ただ、野生下では流れのある河川の上流域で、どちらかというと冷涼な場所に生息しているため、水温の上昇には弱い傾向があります。

石巻貝のために餌を入れる必要はある?

水槽のコケを食べているから石巻貝には餌が必要ないと思われがちですが、水槽内のコケを食べ尽くしてしまったら食糧不足で死んでしまいます。ただし、ほかの観賞魚と一緒に飼育する場合は、餌の食べ残しなどもあるので、特に石巻貝のために餌を与えるといったことは考えなくていいでしょう。

石巻貝が動かない!?原因と対策

石巻貝を水槽に導入したけど、翌日も動かないというケースがたまにあります。水槽のガラス面に張り付いているなら、死んでいるわけではないので問題ありませんが、床にそのままの状態で動かない場合、死んでしまった可能性があります。目安として1~2日、同じ場所から動かない場合は死んでいる可能性が高いので確認しましょう。なお、石巻貝は意外とすぐに死んでしまう生体なので、原因の特定は簡単ではありませんが、水質が酸性に傾くと脆さがあるので、常にpHチェックは欠かさないようにしましょう。

石巻貝が卵を産んだ!繁殖は簡単?

冒頭で少し触れましたが、石巻貝は卵嚢という袋に入った卵を岩や石に産み付ける習性があります。ただし、それは孵化しない卵です。石巻貝は卵から孵化してベリジャー幼生となり、海水で浮遊しながら成長する生物なのです。つまり淡水魚用の水槽では孵化できないのです。さらに寿命も1年ほどと短いため、繁殖させることは不可能です。

石巻貝は水草を食害する?

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石巻貝などコケ取り要員として導入される貝類は、ヤスリのようなザラザラした歯舌でコケを削り取って食べる特徴があります。このため、水草も葉や枝を歯舌で食べてしまうため、柔らかい水草では表面が削り取られる可能性があります。アヌビアス・ナナのように硬い葉を持つ水草であれば問題はおきにくいです。

石巻貝の水槽への導入方法

石巻貝は汽水域から淡水まで幅広い水質に対応するため、水合わせの必要がないと思われがちですが、そうはいきません。前述の通り、石巻貝は弱アルカリ性の水質を好み、酸性に傾いた水質では死んでしまうこともあります。また、高水温にも弱いので、観賞魚ほど敏感ではありませんが、水槽に導入する際は必ず水合わせをするようにしてください。

実は意外と弱い石巻貝。貴重なコケ取り要員として大切に飼育しよう!

石巻貝の生態や特徴、コケ取り能力についてご説明してきました。石巻貝は観賞魚ショップでコケ取り要員として、とても安価で販売されており、飼育も手がかからないと説明されることが多いと思います。しかし、実は意外と弱く、あっけなく死んでしまうこともあります。水槽の美観を保つために貴重な“お掃除屋さん”としての戦力を維持するために、水質や水温に注意し、ひっくり返っていたらすぐに戻してあげるきめ細かな飼育を心がけるようにしましょう。

石巻貝のコケ取り能力は?