目次
ゾウリムシってどんな生き物?
まずはゾウリムシがどんな生き物なのか、基本的な知識をおさらいしておきましょう。
ゾウリムシの特徴と体の構造

ゾウリムシは真核生物に分類される単細胞生物の一種で、体に 繊毛(せんもう)と呼ばれる短い毛が生えているのが特徴です。ゾウリムシは繊毛を動かして移動することができ、らせん状にぐるぐると回転して泳ぎ回ります。
ゾウリムシの名前は、動物学者の川村多実二が英語名の「slipper animalcule」のslipper=スリッパを草履と訳したことに由来しています。ゾウリムシは収縮胞と呼ばれる細胞器官が体の前後に合わせて2個あり、それを用いて浸透圧の調整を行っています。
ゾウリムシという名前から平べったい姿を想像する人も多いですが、 実は細長い筒状の体になっています。
ゾウリムシの大きさは?肉眼で見える?

ゾウリムシの 大きさは0.1~0.3mm程度と非常に小さく、肉眼でギリギリ見えるか見えないかくらいの大きさです。
ペットボトルなどに入れたゾウリムシをライトなどに当てて目を凝らすと、モゾモゾと動き回るゾウリムシを観察することができます。しっかりと細胞の構造などを観察したい場合は、顕微鏡が必要になります。
ゾウリムシは自然発生するの?どこにいる?

ゾウリムシは本来、水田や池・湖といった、流れが少ない淡水に住んでいます。流れのない落ち葉などが溜まった水溜りなどにもゾウリムシは生息しています。
水溜りにもいることから、ゾウリムシは自然発生すると思っている人も多いですが、厳密には違います。ゾウリムシは空気中にも漂っていて、栄養分がある水には入り込んで増殖していきます。
そのため、バケツなどに水を汲み置いておくと、ゾウリムシをはじめとしたさまざまな微生物が増えていることがあります。
ゾウリムシの寿命は?

ゾウリムシは700回細胞分裂すると寿命をむかえて死んでしまうと言われています。ゾウリムシは育成する環境にもよりますが、1日に2~3回程度分裂します。後ほどご紹介するゾウリムシの増やし方では3〜4日でかなりの数までゾウリムシを培養することができます。
ゾウリムシの培養方法(増やし方)
ゾウリムシはポイントさえ押さえておけば、誰でも簡単に増やすことが可能です。ゾウリムシの培養方法について解説していきます。
ゾウリムシの培養方法を動画で学ぼう
ゾウリムシの培養方法について動画で観たい方は、こちらの動画がおすすめです。
培養に必要なもの
培養に必要な道具は以下の通りです。
ゾウリムシの種水
カルキ抜きした水
ペットボトル(2L)
ゾウリムシの餌(エビオス錠、強力わかもと、無調整豆乳、微糖コーヒーなど)
培養に適した環境
ゾウリムシは環境が整っていると爆発的に増殖します。ゾウリムシ培養に適した環境は 気温20~25度程度で、温度変化が少ない日陰が好ましいでしょう。
20度よりも気温が低い・25度よりも気温が高い環境でも培養は十分可能ですが、培養速度に影響が出る場合があります。気温が高い場合は増殖速度もとても早いですが、餌切れ・水質悪化も早いため、注意が必要です。
培養の手順
① 2Lペットボトルにカルキ抜きした水を全体の6割程度入れます。
② ゾウリムシの種水を全体の2割程度入れます。
③ エビオス錠を1錠入れます。
④ キャップを閉め、10回程度ペットボトルを振り、酸素を供給します。(強力わかもとの場合も1錠、豆乳の場合はスポイトで4〜5滴)
⑤ ペットボトルのキャップを外し、涼しい日陰に置いておきます。
⑥ 1日一回〜二回、④を繰り返します。
上記手順で、3〜4日もすればゾウリムシの培養が可能です。道具の最後に載せたゾウリムシの餌ですが、基本的にはどれを使っても培養はできますが、種類や使う商品によって増えるスピードなどは様々です。
コーヒーや豆乳などは、それ自体による水の汚れも比較的少なくおすすめです。PSBなども培養している人は、エビオス錠がどちらにも使用できるので重宝します
ゾウリムシはどこで売っている?ホームセンターで手に入るの?

ゾウリムシの種水の入手は ネット通販が最も便利でおすすめです。ホームセンターなどでは取り扱いが基本的にはなく、実店舗で入手するにはメダカ専門店に問い合わせしてみると良いでしょう。
一部のホームセンターでは、アクアリウムショップが経営・管理しているアクアコーナーがある場合もありますので、すぐにゾウリムシを入手したい人は、お近くのホームセンターに一度問い合わせてみてください。
ゾウリムシはめだか稚魚の初期飼料におすすめ
ゾウリムシはメダカの稚魚の餌にいいと言う話を聞いたことがある人も多いと思います。メダカの稚魚の餌にはいろいろな種類がありますが、ゾウリムシが餌としてなぜいいと言われているか、他の目メダカ稚魚の餌と比較しながら解説していきます。
ゾウリムシはメダカの針子でも口に入る

ゾウリムシは前述の通りとても小さな微生物です。そのため、産まれて自分で餌を食べ始めたばかりのメダカ(針子)でも、ゾウリムシを食べることができます。
稚魚用の人工飼料も細かな粒であれば食べることができますが、しっかりとすりつぶされていないと、食べきれずに針子が餓死してしまうことになりかねません。 メダカの針子が死んでしまう原因は餓死が多いため、この餌のサイズというのはとても重要です。
その点、ゾウリムシは小さな針子でもしっかりと食べることができるので安心です。ちなみに、ゾウリムシは親めだかの餌にもなります。
ゾウリムシとミジンコ、どっちがいいの?

ゾウリムシと並んで、メダカの稚魚の餌として有名なのがミジンコです。ミジンコはゾウリムシよりもサイズが大きいため、針子サイズのメダカはミジンコを口に入れることができません。ミジンコはゾウリムシの次の段階の餌としては栄養価も高くおすすめです。
ミジンコもゾウリムシと同様、生き餌で栄養価も高く嗜好性も高いため、稚魚を早く大きくしたい場合にはメダカをはじめとした様々な観賞魚で用いられる餌です。
また、ゾウリムシもミジンコも、万が一、食べ残しがあってもめだかの水槽内でしばらくの間は生きているので、自宅を開ける時間が長い人にとってはとても便利な餌となります。
ゾウリムシとミドリムシ、どっちがいいの?

ゾウリムシに似た名前のミドリムシという生き物も、めだか稚魚の餌として使われる場合があります。ミドリムシも栄養価が高いですが、ミドリムシは光合成によって成長し、ゾウリムシよりも培養には時間がかかる生き物です。
また、ミドリムシの方がゾウリムシよりもサイズがさらに小さく、0.05〜0.1mmほどと言われています。メダカの針子はミドリムシもゾウリムシも食べることができますが、ミドリムシの方が入手しにくく、培養にかかる時間も長いため、はじめはゾウリムシからスタートするがおすすめです。
ゾウリムシのメダカへの与え方

ゾウリムシを与える際は、スポイトなどでメダカの針子容器に少しづつあげると良いでしょう。管理している容器の大きさにもよりますが、あまりたくさん入れるとゾウリムシによって水質悪化を招いてしまうので、入れす過ぎは禁物です。
スポイトで少しづつ入れると、針子が寄ってきて食べているのが観察できると思います。
与える場合にコーヒーフィルターで、培養した液体を濾してから与えるという人もいます。エビオス錠などで培養した場合は、エビオス錠のカスが沈殿したりするのでそれを越す目的がありますが、与える量に気をつければ、そこまで神経質にならなくても問題はありません。
メダカの稚魚には、どれくらいの期間与えるといいの?

めだかの針子の餌として、とてもいいゾウリムシですが、 生後10日間〜2週間程度まではゾウリムシメインで与えると良いでしょう。サイズが1cm近くになってきたら、徐々にミジンコや粒の細かな粉餌を併用し切り替えていくのがおすすめです。
前述した通り、成魚のめだかにゾウリムシを与えても構いません。成魚の場合はゾウリムシだけでは餌の量が不足しがちですので、粉餌をメインに与えるようにしましょう。
ゾウリムシでメダカ稚魚の餓死を防いで、成長スピードUP!

ゾウリムシはメダカをはじめとした観賞魚の稚魚の餌に最適です。培養も管理も簡単なので、まだ培養したことがない方はぜひこの記事を参考に、培養にチャレンジしてみてください。
めだかの稚魚の成長が遅い・だんだん死んでしまうと悩んでいた方は、ゾウリムシを与えることで問題が解決するかもしれません。ゾウリムシをしっかりとあげてたくさん稚魚を大きく育ててあげましょう。