Vol.3 幹之から始まった改良めだかプロブリーダーへの道(奈良県天理市/乾さん)

色々な形で魚に関わっている人を特集する「魚好人」。第三回は、奈良県天理市でメダカのブリードをおこなっている乾さん(花火メダカさん)を取材させていただきました。常に素敵なメダカを作出し続けている乾さんの気になる飼育場の様子や飼育のノウハウの一部、めだかにかける熱い想いなどをご紹介させていただきます。

 

1.これが花火めだかの飼育場だっ!

まず初めに訪れたのは乾さんの自宅庭にある飼育場です。足の踏み場も無いほど、大小様々な飼育容器が、所狭しと並べられていました。単管パイプで棚を作っているほか、ビニールハウスも活用しながら様々な品種のめだかを管理されていました。

花火めだかさんの飼育場1

ここで一つ気になったのは、それぞれの容器に品種名などがほとんど書かれていない点。乾さん曰く、「どの品種がどの容器に入っているのかは頭に入っている」とのこと。容器の数はざっと数えただけでも100以上ありましたが、それを全て記憶だけで管理しているのには驚かされました。

花火めだかさんの飼育場がすごい

こちらはビニールハウス内の様子です。主に使用されているのは白と黒のバケツと小型容器でした。一つ一つの容器の水量は決して多くありませんが、どの容器の個体もとても元気で健康な様態のものばかり。的確な水換えや餌やり管理が為せる飼育方法だと思います。

花火めだかさんの飼育場には驚かされました

終始笑顔で明るくメダカについて語ってくれる乾さん。乾さんの誰にでも気さくな性格も、花火めだかのファンが多い要因の一つと言えるのではないでしょうか。

花火めだかさんが選別してくれました

次に訪れたのは、自宅から少し離れたところにある約400坪もの広大な飼育場です。

花火めだかさんの第二飼育場

こちらの飼育場では大型のプールを使用して、めだかを沢山ブリードされていました。数トンもの水量が入るプールがいくつも置いてあり、最盛期には一つのプールに数千匹ものめだかが泳ぐそうです。

親抜きをする花火めだかさん

めだかを必死に探す乾さん。これだけ大きなプールだと、全部のめだかを掬い上げるのもなかなかの重労働….。私も微力ながら、お手伝いさせていだだきました。

 

 

来シーズンには、自宅飼育場に加えて、こちらの大型飼育場も本格始動するとのことでした。取材時点でも綺麗なめだかが沢山泳いでいましたが、来シーズンもさらに楽しみです!

2.花火めだかオリジナルの水質浄化剤まで開発!?

ZENDAMAは花火さんが考案した水質浄化剤

なんと乾さんは、ご自身でめだかの為に水質浄化剤「ZENDAMA」も開発されたそうです。ZENDAMAには5種類の菌が含まれており、めだか飼育においては水質浄化の役割のほか、稚魚の初期飼料や色揚げ効果にも一役買ってくれる優れものとのこと。なんでも、本来は野菜の成長促進などにも使われるものとのこと。

 

めだか飼育ではPSBを使っているという愛好家の方が多いと思いますが、PSBの大きなデメリットとしてツーンと鼻につく臭いがあります。その点、乾さんのZENDAMAは、嫌な臭いがほとんどなく、甘酸っぱい柑橘系の香りがするだけなので、特に屋内での飼育などにはもってこいの代物です(私もお土産で一ついただきました)。

3.気になるブリード品種を大公開!

今回取材させていただいた中で、特に気になった個体達を一挙ご紹介していきます。取材当時は10月中旬とめだかシーズンももうすぐ終わりという季節でしたが、思わずうっとりするような素晴らしいめだかが目白押しでした。

三色から出た個体らしいが、黒と赤のコントラストがはっきりとしていて、かつ渋い色合いが魅力的な個体。

柿色とラメが鮮やかな、煌ラメ。これからますます色が仕上がっていく予感がします。

改良めだかでは代表的な品種である楊貴妃ですが、乾さんの個体は累代をしっかりと重ねられたのが表現によく出ています。お腹まで赤がしっかりと乗っていてとても綺麗です。

花火めだかのルーツともなった幹之めだか。こちらも細部まで色がしっかりと乗っていて目を奪われました。

こちらは、まだ名前がついていないめだか。一見すると幹之めだかにも見えますが、よく見ると白地と青地が部分的に分かれている面白い表現がみられます。

乾さんが作出された麒麟の通常バージョンと白バージョン。

プリプリした体系と優雅なヒレが魅力的なオロチヒレナガダルマも。

こちらも乾さん作出の花心。ピンクゴールドの体色が繊細で女性にも人気の品種です。

4.幹之めだかの卵から始まっためだか人生

乾さんが改良めだかを始めるきっかけとなったのは、幹之めだか。8年ほど前に幹之めだかの卵が当時の職場の近くで販売されていて、それを購入したのが始まりとのことでした。もともと金魚や熱帯魚などの観賞魚も趣味で飼育していましたが、改良めだかほどハマることはありませんでした。改良めだかもはじめは趣味でしたが、ブリードを重ねるうちに自然と本業となったとのことです。

花火めだかさんのルーツは幹之めだか

改良めだかの魅力は?と乾さんに尋ねたところ、「掛け合わせと選別の面白さ」と答えていただきました。改良めだかを始めた当初は、1対1の掛け合わせを中心に様々な品種を作るのに熱中したそうで、基本的な品種の作出過程は実際に行った上で、ある程度把握しているそうです。今でこそ、めだかの遺伝子についての情報は雑誌やネットに沢山溢れていますが、まだ幹之めだかがでた当初はそんな情報は全くなかったはず。’実際に掛け合わせてみる’というシンプルかつ大変な行為を長年取り組んでこられたからこそ、今の乾さんの豊富な改良技術があるのだなあ、と思わされる貴重なお話でした。

 

5.血統による品種改良に重点を置くスタイル

乾さんの育てるめだかは、血統による品種改良に重きを置いているそうです。めだかは「常にグリーンウォーターで飼ったほうが色が上がる」「色揚げ成分が入った餌をあげる」など、飼育環境や餌環境によって発色や健康状態なども大きく影響を受けます。逆を言えば、初心者にとって、「特殊な飼育方法でなければ綺麗に・健康に育たない」ということも起こりうるということ。

 

乾さんはこの点において、「誰が飼育しても綺麗で健康的に育つ」めだかを作るよう努力されているそうです。めだかの体色はできるだけ、選別による血統で改良し、飼育方法ももっとも一般的な透明水で飼育することを心がけているという点も品種改良への特別なこだわりが感じられます(もちろんですが、状況に応じて稚魚にはグリーンウォーターで飼育するなどの方法も取られています)。

6.手を加えすぎず、自然に飼育するのが一番

乾さんにめだか飼育のコツについて聞いたところ、「必要以上に手をかけすぎず、出来るだけ自然な状態で飼育すること」とのことでした。大事なめだかほど、こまめに掃除や水換えをしたりしたくなりがちですが、時にはそれが裏目に出てしまうこともあるのは私も日頃、実感していたことなので、このお話にはとても納得させられました。

自然に飼育するのが花火めだかスタイル

最後にこれからめだか飼育を始める方に伝えたいことは?とお聞きすると、「めだかは本当に飼育も繁殖も簡単で誰でも楽しめる気軽な趣味の一つだと重思います。神経質になりすぎず、気楽に楽しめるのが改良めだかのいいところ。飼育もシンプルに考えてみると意外と上手くいくことが多いですよ。」とのことでした。

 

 

乾さん、この度はお忙しいところ、取材を受けてくださり本当にありがとうございました!私も大変勉強になりました。

 

乾さんは「花火めだか」という屋号で、イベント出店やオークション販売などを手がけておられます。イベントなどは主に大阪・奈良・京都などで開催されていますので、お近くの方はぜひ足を運んでみてください。各種情報については、インスタグラムやfacebook、ブログ等で情報を発信されていますので、気になる方はぜひSNSもチェックしてみてください!

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