ワラスボは有明海に潜むエイリアン!?気になるお味や生態とは?

ワラスボはハゼの仲間で、「有明海のエイリアン」と言われるほど独特な外見を持っています。まずは、ワラスボについて特徴や生態などを見ていきましょう。

分類スズキ目ハゼ科ワラスボ属
和名ワラスボ
学名Odontamblyopus lacepedii
分布有明海および八代海。朝鮮半島、中国、台湾。
特徴体は細長く、体長40cmほどになる。目は退化しており、歯は鋭い。腹びれは吸盤状。

ワラスボとは

特徴・生態

体長40cmほどにまで成長するハゼの仲間で、国内では有明海とその周辺にのみ分布している珍しい種類です。魚体はかなり細長くウナギを思わせますが、腹ビレは吸盤状になっており、しっかりとハゼの特徴を有しています。内湾や河口に位置する干潟に生息しており、泥に30cm程度の深さの巣穴を掘って生活しています。この巣穴にはいくつかの入り口があり、泥中で接続しています。食性は動物食性です。干潮時には巣穴に身を潜めており、満潮になると出てきて小魚や甲殻類、貝類に加えて頭足類など何でも捕食します。産卵期は6~9月頃。メスが巣穴の中に産卵した後に、オスがその卵を孵化まで保護する習性を持ちます。

有明海のエイリアンとも

ワラスボが「有明海のエイリアン」と呼ばれるのは、その不気味な外見が原因です。まず、本種の表皮や筋肉は透明感があるため、血管や内臓の一部が透けて見え、全体的な体色は紫色をしています。次に、歯が発達しているのですが、その歯は口を閉じていても露出する構造になっています。更には、目が退化して表皮に埋没しており、頭部をよく観察するとその跡が見て取れると、一般的な魚とは一線を画する特徴を有しているのです。その外見は映画『エイリアン』に登場し、主人公たちに襲い掛かった地球外生命体、いわゆるエイリアンにそっくりなので、そう呼ばれるに至りました。

ワラスボの名前の由来

ワラスボの名前の由来

ワラスボは見た目こそ不気味ですが食味は良く、現地では昔から食用に利用されてきました。主な利用法としては干物にするのですが、名前の由来はその干された姿にあります。干したワラスボは、元々細長かった体が更に細長くなり色も褐色になります。その姿が、稲わらを束ねて作った筒状の容器に似ていることに由来する、と考えられています。ちなみに、主な漢字での表記法は「藁素坊」です。

ワラスボの伝統漁法「すぼかき」

先ほど、食用に利用されてきたと記述しましたが、それに伴って「すぼかき」と呼ばれる漁法も確立されています。ワラスボが居る干潟は軟泥底で、人が普通に踏み入ると腰まで沈み身動きが取れなくなることも珍しくありません。そこで、干潮時に「潟スキー」と呼ばれる、長さ2m・幅30cmほどの板に乗って干潟に進出し、「スボカキ」という漁具を用いてワラスボを捕らえる漁法が編み出されました。スボカキは長さ1.3m程度の薙刀状の道具で、これを泥中に潜むワラスボの体に引っ掛けて捕らえます。この漁具の名前が、そのまま漁法の名前として定着しており、有明海の風物詩となっています。

ワラスボの気になる味は?

前述のとおり、ワラスボは見た目に反して美味なので、現地では古くから食用に利用されてきました。ここでは、主なワラスボ料理をご紹介します。

ワラスボの気になる味は

ワラスボの干物

ワラスボは食味が良いと言っても、干潟の泥に住む魚。きちんと下処理をしないと、泥臭さが残ってしまいます。そのため、内臓を除去したうえで、干物にしてからの利用が伝統的かつ一般的です。干物にしたワラスボは、焼いたりあぶったりして、おかずやおつまみにする他、素揚げにしても美味しく食べられます。また、粉末状に砕いたものをご飯にかけて食べる利用法もあり、それは「もくさい」と呼ばれています。

ワラスボの刺身

近年では、刺身での利用も注目を集めています。ワラスボの刺身は脂が乗っているわけではないらしいのですが、独特な歯ごたえとワラスボ本来の旨味を感じられて美味しいと評判です。ワラスボの場合は特に鮮度が重要で、鮮度落ちすると泥臭さが出てしまうため、ご自身で釣り上げるなどしたものを刺身にする時は、活〆にしたうえですぐに内臓を取り除いておくと良いでしょう。

ワラスボの煮付け

煮付けも定番の調理法で、鮮魚の他に干物も使われます。レシピは他の魚と同様ですが、ワラスボからもまた良い出汁が出るので、甘辛い味付けとマッチし美味です。大根などの野菜と一緒に煮付けても非常によく合います。

地元ではワラスボに関連した様々な商品が!

ワラスボは、有明海とそこに接続する海でしか見られない珍種とあって、有明海に面する福岡・佐賀・長崎・熊本の各県では、本種の観光資源としての活用も近年活発になっています。一例としては、ワラスボの出汁でスープを作ったラーメンや、ワラスボエキスを配合したエナジードリンクが挙げられます。この動きは特に佐賀県が力を入れており、県がワラスボに関する公式ホームページを運用したり、地元の事業者の協力の下、食べ物以外のグッズ展開も行っています。中には、ワラスボを可愛くアレンジした有田焼の小物類などもあるので、興味がある方は覗いてみてはいかがでしょうか。

ワラスボの釣り方

ワラスボは、すぼかき漁の他にアンコウ用の網で漁獲されていますが、ハゼ用のちょい投げ仕掛けで釣ることも可能です。基本的なタックル構成は次の通りです。ロッドは2m前後の万能竿やアジ用のライトなルアーロッドなど、リールは小~中型のスピニングリールを使用します。ラインはナイロン1~2号に相当するものを、仕掛けは前述の通り、ハゼ用のちょい投げ仕掛けです。仕掛けは自作できれば理想的ですが、市販もされているためそれを購入すると便利です。エサは何にでも食いついてくるので、イソメといった基本的なもので問題ありません。注意が必要な点は、有明海は潮の流れが速いため、通常のハゼ釣りよりも重量があるオモリを用意する必要があることです。釣り方に関しては他のハゼ類と同じで、オモリを着底させた後に、底を引きずるように動かして誘います。また、有明海の周辺ではすぼかき漁の体験ができるサービスも提供されているので、そちらの利用もおすすめです。

ワラスボは飼育できる?

ワラスボは体長40cm程度になるので、飼育に必要な水槽のサイズは90cmクラス以上です。フィルターは強力なものが必要で、上部式や外部式に加えてオーバーフロー水槽が視野に入ります。また、本種は泥に潜る性質があるため、底床は必ず用意してあげましょう。泥は水槽では管理が難しいので、海水水槽用の角取り処理がされた底砂がおすすめです。適水温は20℃前後、水質は汽水~海水です。そのため、クーラー・ヒーターなどの温調機器と、人工海水の素も用意してください。エサは、人工飼料に餌付く個体は少ないと言われているため、基本的には生餌が必要になります。1日に1回か2回に分けて、それぞれ数分以内に食べきれるだけの量を与えてください。食べ残しは水質悪化の原因になるので、速やかに水槽から取り除いておくと良いでしょう。

不気味だけど美味しい!「有明海のエイリアン」の異名を持つワラスボ!

ワラスボはハゼの仲間で、国内では有明海とそこに接続する海にしか居ない珍しい魚です。退化した目に常時むき出しの歯、血管や内臓が透けた紫色の体と、かなり不気味な見た目が特徴的です。しかし、その外見からは想像できないほど食味は良く、現地では古くから食用に利用されてきました。近年では、ワラスボを観光資源としてアピールする動きも活発になっており、グッズ展開やすぼかき漁の体験プランなども見られます。皆さんも、有明海のエイリアンことワラスボに、色々と触れてみてはいかがでしょうか。

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