分類 | スズキ目サバ科サワラ属 |
---|---|
和名 | サワラ |
学名 | Scomberomorus niphonius |
分布 | 北海道〜九州にかけての各地沿岸。 |
特徴 | 体は細長く側扁し、暗色斑が並ぶ。体長1mほどになる。 |
サワラってどんな魚?
食卓にもよく上がるサワラですが、どのような魚なのでしょうか。まずは、サワラの特徴や生態についてご紹介します。
特徴
体長1m前後にまで達する大型の海水魚で、魚体は側扁して細長く、頭部は小さいです。背ビレは第1・第2とあり、第2背ビレと尾ビレ、尻ビレと尾ビレの間にはそれぞれ、サバ科に特有の小離鰭(しょうりき)が8~9並びます。
体色は、背側が青色を帯びた灰色~黒色をしており、腹側は銀白色です。側線は波打つように入り、体側には暗色の斑点が散在します。各ヒレは基本的には灰色~黒色をしていますが、腹ビレは白色で小さいことが特徴です。
生態
サワラは北海道以南の日本全国で見られ、他には東シナ海や西太平洋に分布しています。暖かい海を好み、海水温が高い時期は沿岸部の表層を生活の場としていますが、海水温が低下してくると沖の深場に移動します。
以前は南~西日本に多い魚でしたが、近年の気候変動の影響からか北上傾向にあり、現在では東北地方でも漁獲量が増えています。
産卵期は春から初夏。この時期になると産卵を行うために、瀬戸内海などの内湾に移動します。食性は動物食性で特に魚食性が強く、若魚の頃から小型甲殻類の他、小魚を積極的に捕食します。
/サワラの見分け方
日本近海には、サワラ属に分類されている魚種が他に4種類おり、それはヨコシマサワラ・ウシサワラ・ヒラサワラ・タイワンサワラです。それらの魚種とサワラとの見分けは、サワラにしか見られない特徴があるため比較的容易です。
チェックすべき項目は、 側線の形状・胸ビレの形状・模様・第1背ビレの棘条数が、主なものとして挙げられます。まず、側線の形状ですが前述の通り、サワラは波打つ形状をしています。次に、サワラの胸ビレの形は後端が尖っており、丸みを帯びる種類との見分けに役立ちます。
模様に関しては、サワラは他よりも多くの暗色班が入ることが特徴です。最後に、第1背ビレの棘条数ですが、サワラは19~21と他の種類よりも多いです。
サワラの名前について
サワラは大きさによって呼称が変わる、いわゆる出世魚です。ここでは、サワラの名前の由来や呼び名の変化についてご紹介します。
名前の由来
サワラの漢字表記としては「鰆」が一般的ですが、別に 「狭腹」というものがあります。読んで字のごとく腹部が狭いという意味ですが、サワラの細身の体形を指して「狭腹(さはら)」の字があてられ、名前の由来になったというのが定説です。
「鰆」の方は、主に西日本で使用されてきた経緯があります。瀬戸内海などでは、春になると産卵のためにサワラが押しかけ大量に獲れたことから、春を告げる魚として知られていたために、魚へんに春の字があてられサワラを意味するようになりました。
大きさによって呼び名が変わる出世魚
サワラはサイズによって名前が変わる出世魚です。地域で異なる点もありますが、関東と関西での主な名前と、大きさの目安は次に示す通りです。
- 関東 サゴチ(体長約50cmまで)→サワラ(50cm越え)
- 関西 サゴシ(体長約50cmまで)→ヤナギ(50~60cmまで)→サワラ(それ以上)
サゴチ・サゴシ双方とも狭い腰を意味する「狭腰」から来ており、サワラと同様に体形を強く意識した命名になっています。ちなみに、サワラは成長速度が速い魚で、ふ化後1年で体長40~50cm、2年で60~70cm、3年で80cm前後にまで達します。
サワラの身の特徴
食材として広く利用されているサワラですが、肉質や栄養価にはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、食材として見たサワラの特徴についてご紹介します。
サワラは白身?赤身?
サワラの身は一見すると白身に思えますが、実は赤身に分類されています。基本的に赤身はサバ科の魚種をはじめ、外海を広く回遊する種類に該当する肉質です。
一方で白身は、あまり広範囲を遊泳しない、いわゆる根魚と呼ばれる魚種に当てはまります。また、筋肉に含有される成分的にも、サワラは白身魚の肉質よりもマグロなどと近いことから、赤身魚の方に含まれているのです。
DHAやEPAが豊富
先ほど、サワラの身に含まれる成分はマグロに近いと述べましたが、サワラもマグロと同様に不飽和脂肪酸のDHAやEPAが豊富です。DHAやEPAはどちらも脳細胞や神経細胞の機能維持に貢献することが知られている他、血栓の生成予防やガンの抑制効果もあると言われています。
また、体組織を正常に保つ働きを持つビタミンB群や、カルシウムの吸収をサポートするビタミンDなども多く含まれていることが分かっています。そのため、サワラを適度に食生活に取り入れることで、生活習慣病などの予防効果が期待できます。
サワラの旬
サワラの旬とされている季節は地域によって異なります。古くからよく利用されてきた関西での旬は春です。この時期はサワラが1年で最も多く獲れることに加え、関西では白子や真子も食用として重要な地位を占めているため、これらの器官が発達する春が旬とされているのです。
対して、関東での旬は冬とされています。これは、関東では内臓よりも身の方が重要視されているためで、産卵期を前に栄養を蓄え、最も身が充実する季節が冬だからです。冬季に脂が乗ったサワラは 「寒鰆」と呼ばれ、大型のものは高級魚として扱われています。
鮮度の良いサワラの見分け方
新鮮なサワラには次に示す特徴があります。
- 身がしっかりとしていて硬い
- 目が濁らず澄んでいる
- 体に光沢があり斑点模様がしっかりと確認できる
- エラが退色しておらず鮮やかな赤色をしている
これらの項目が当てはまるものは鮮度が良い証拠です。サワラは足が早い魚なので、特に生食したい場合は新鮮なものを選べるように、見分け方を覚えておくと良いでしょう。
/サワラのおすすめ料理
サワラは様々な調理法で美味しく食べられる魚です。鮮度が良いものは生食にも適しており、特に脂が乗った寒鰆の刺身は、濃厚ながらもクセのない旨味を味わえて絶品です。また、サワラも皮目に旨味があるタイプの魚なので、焼き霜造りにしても美味しく食べられます。
焼き物との相性も良好で、特に味噌漬けにしたサワラを焼いた 西京焼きは定番料理です。普通に 塩焼きにしても、皮目の香ばしさが身の旨味を引き立ててくれて美味です。
煮物にしても美味しい魚なので、煮付けも代表的な調理法に数えられます。しかし、サワラの身は柔らかく身割れしやすいため、あまり強く煮付けないようにしましょう。
サワラの釣り方
サワラはその食味の良さと、大型になると凄まじい引きをすることから釣りのターゲットとしても人気の魚です。堤防や磯などから金属製のメタルジグというルアーを投げて釣る 「ショアジギング」という釣り方が一般的です。
また、近年では、船からのジギングやキャスティングなどでサワラを狙うスタイルも人気が高まりつつあり、専門のルアーサワラ船も数多く出船しています。
春を告げる魚サワラ、旬は春だけじゃない!
サワラはサバ科に属する大型回遊魚で、かなり細長い体形が特徴的です。西日本では春を告げる魚として古くから親しまれており、旬の時期も春とされています。
しかし、身の方を食すのであれば、産卵期を前に栄養を蓄える冬の方が適しています。冬のサワラは寒鰆と呼ばれ東日本では重宝されており、その刺身は絶品です。ぜひ、一度ご賞味ください。