ミノカサゴは綺麗なヒレを持つ毒魚!刺された時の対処法は?

[no_toc] ミノカサゴの生態や見分け方を解説

 

分類 スズキ目フサカサゴ科ミノカサゴ属
和名 ミノカサゴ
学名 Pterois lunulata 
分布 北海道南部以南の日本の各地沿岸
特徴 体全体に横縞模様がある。背鰭と胸鰭は大きく、各鰭条は長く伸びる。

ミノカサゴの名前の由来

ミノカゴは綺麗な鰭が特徴的

 

ミノカサゴの漢字表記は「蓑笠子」です。名前の由来は、本種が持つ長い胸鰭や背鰭を蓑に見立て、それを纏っているかのような姿から来ています。

 

ちなみに、英語では「Luna lionfish」と「Dragon's beard fish」という2つの名称があります。ミノカサゴの派手な見た目を意識してか、どちらも大仰なネーミングになっています。

別名ヤマノカミとも

ミノカサゴは別名ヤマノカミとも

 

複数の別名・地方名を持つ魚は珍しくありませんが、ミノカサゴもその例に漏れず、いくつもの名前を持っています。代表的なものとしては、主に九州で使われている呼び名である「ヤマノカミ」があり、この名称で呼ぶ地域は九州以外にも多いです。

 

その他には、「キミオコゼ(高知)」や「ハナオコゼ(和歌山)」、「マテ(三重)」などの名称があります。ちなみに、標準和名で「ヤマノカミ」と呼ばれている魚がいます。それは、スズキ目カジカ科に属する魚で、サケなどと同じく降海する性質を持ってはいますが淡水魚であり全くの別種です。

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ミノカサゴの生態

ミノカサゴの生態とは

 

ダイビングなどをしているとよく見かけるミノカサゴですが、意外と気性の荒い魚で人間相手でも向かってくる時があります。海中でミノカサゴを見かけたら刺激しないようにゆっくりと離れましょう。

 

日中でもよく見かけますが、実はミノカサゴは夜行性で、夜になると活発に泳ぎまわってエサを食べます。ミノカサゴのエサは小魚、エビなどの甲殻類などで、口を大きく伸ばして海水ごとエサを瞬時に丸のみにします。

 

また、ミノカサゴに近縁なカサゴやメバルの仲間は稚魚を出産する卵胎生で知られていますが、ミノカサゴの場合は他の多くの魚と同じく卵生で、卵の状態で出産します。

ミノカサゴは危険な毒魚!

ミノカサゴの鰭には猛毒があるので注意!

 

ミノカサゴは非常に綺麗な魚ですが、 背鰭・腹鰭・臀鰭の棘に強力な毒腺を備えています。万が一刺されると、患部は大きく腫れ激しい痛みを伴います。

 

死亡例はほとんどありませんが、重症の場合は吐き気、めまい、呼吸困難、意識障害などを引き起こすこともあるので、ミノカサゴに刺されたらすぐに病院に向かいましょう。ミノカサゴの毒はタンパク毒なので、応急処置として患部を40~50℃くらいのお湯につけると、毒が失活し痛みは和らぎます。

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もしもミノカサゴが釣れてしまったら?

ミノカサゴが釣れてしまったらどうする?

 

堤防で穴釣りやサビキ釣り、ちょい投げ釣りなどをしていると、稀にミノカサゴが釣れてしまうことがあります。そのまま素手で針を外そうとすると刺される恐れがあるため、ミノカサゴが釣れた場合は、フィッシュグリップやメゴチバサミなどで魚を持ち安全に針を外しましょう。

 

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ミノカサゴが釣れるたびに糸を切っていては仕掛けがもったいないですし、魚も可哀想ですよね。なるべく素早く安全に針を外してやるためにも、こういった道具は常に持って釣りに行きましょう。

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2023年9月24日

ミノカサゴに似ている種類

ミノカサゴにも姿が似た仲間がいます。ここでは、ミノカサゴに似ている種類とその見分け方などをご紹介します。

ハナミノカサゴ

ハナミノカサゴとミノカサゴの見分け方

 

西太平洋からインド洋にかけて分布している、体長30~40cm程度に達する大型の種です。ミノカサゴと同じくミノカサゴ属に分類されており姿も似ているのですが、体色と模様を意識すれば見分けが可能です。まず、体色ですが本種はミノカサゴよりも全体的に濃く、赤褐色や暗褐色を基調としています。

 

次に、模様については顎の下から胸部にかけての部分と背鰭や尾鰭に注目です。ミノカサゴは胸部に縞模様がないのに対し、本種はそこにも模様が入る特徴を有します。また、ミノカサゴは背鰭や尾鰭に黒色斑が存在しないかあっても薄いのに対し、本種はハッキリと入ります。

ネッタイミノカサゴ

ネッタイミノカサゴは小型種

 

体長20cm程度までにしか成長しない、ミノカサゴと比較すると小型の種類で、ミノカサゴ属に分類されています。本種とミノカサゴは姿が目に見えて異なるため見分けは容易です。

 

まず、本種は胸鰭の鰭膜が軟条の中ほどまでにしか伸びず先端近辺まで到達しません。次に、本種は目の上の皮弁が上方に大きく伸長する特徴があり、さらにその皮弁には縞模様が入ります。そして、背鰭の棘条数は、本種が12でミノカサゴは13です。

キリンミノ

キリンミノの胸ヒレは扇型

 

体長20cm前後になる種類で、本種の分類はスズキ目フサカサゴ科ヒメヤマノカミ属です。西太平洋・南太平洋からインド洋にかけて分布しており、浅場の岩礁帯やサンゴ礁帯で普通に見られます。

 

本種もミノカサゴとは形態が明確に異なるので容易に見分けられ、ポイントとしては、胸鰭の形状・眼上と吻端の皮弁・尾柄部の模様が挙げられます。

 

まず、胸鰭の形状ですが、本種は鰭膜に切れ込みが入らず扇状をしています。次に、本種は眼上の皮弁が上方に伸び、吻端にも3対の皮弁を持ちます。最後に、本種は尾柄部にアルファベットの「T」字型の模様が入ることが特徴です。

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ミノカサゴの飼育方法

ミノカサゴは水槽飼育できる?

 

ミノカサゴはその派手な見た目から鑑賞性が高く、水族館では必ずと言っていいほど見かけます。環境適応力が高く丈夫であるため、海水魚飼育の入門種としてもおすすめです。

 

まず、 適した水槽サイズは90cmクラス以上です。ミノカサゴ自体はそれほど大きくなりませんが、海水での水環境の維持を考慮するとこのクラスは欲しいところです。フィルターも、マリンアクアリウムでは上部式や外部式といった強力な形式が定番で、可能ならオーバーフロー水槽の導入が理想的です。

 

適した水温は23~28℃前後なので、クーラーやヒーターで年間を通して調節してください。海水は人工海水の素を使用して作成すれば問題ありませんが、飼育していると水が汚れてくるため定期的に水換えを行う必要があります。

 

ミノカサゴの飼育には水温にも注意

 

また、特に夏場は真水の蒸発による塩類濃度の上昇が起こりやすいので、適宜に足し水を行ってください。餌は、基本的には動物質のものしか食べないため、活餌が必要です。餌付け次第では乾燥クリルも食べるようになります。

 

与え方は、1日に1回か2回に分けて、それぞれ食べ切れるだけの量を与えてください。食べ残しが出ると水質が急速に悪化するので、食べ残した餌は取り除いておくと良いでしょう。言うまでもありませんが、 水槽作業の際は毒棘に刺されないよう細心の注意を払ってください。

ミノカサゴは食べることができる?

ミノカサゴって食べられるの?

 

派手な見た目と鰭の毒から、何となく食べるのをためらいがちなミノカサゴですが、毒のある鰭を取り除けば身の部分は食べることができます。しかもその身は 淡白でクセが無く、意外と美味しいそうです。

 

ただし、やはりカサゴやメバルなどと比べると水分が多く味は落ちるようで、刺身で身本来の旨みを堪能する、というよりは、煮つけや唐揚げなどの火を通す料理の方が合うかもしれません。ほとんど市場に出回らない魚なので、もしも釣れた時は一匹キープして味を確かめてみるのも面白いですね。

 

ミノカサゴの 旬は夏(晩春)~秋とされています。ただ、本種は個体によって味の変化が大きいと言われており、小型の個体よりも大型の方が美味しいようです。

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調理の際は毒棘が刺さらないように、初めにハサミなどで切って取り除いておくと良いでしょう。アラから良い出汁が取れるため、煮物や汁物との相性は良好です。

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ミノカサゴはサンゴの天敵?

ミノカサゴが大西洋のサンゴ礁に与える影響とは

 

近年、大西洋においてミノカサゴの存在が問題になっています。元々、大西洋には分布していなかったミノカサゴが同海域で繁殖して個体数を増やした結果、 サンゴ並びにサンゴ礁の生態系が破壊される事態を招いているのです。と言っても、ミノカサゴが直接サンゴに危害を加えるわけではありません。

 

ミノカサゴの適応力の高さを含めた生命力の強さと、大西洋には天敵となる生物が存在しないこと、加えてミノカサゴの旺盛な食欲が悪循環になっているのです。ミノカサゴは環境適応力が高いため大西洋でも問題なく生存可能で、さらに天敵がいないので繁殖もスムーズです。

 

ミノカサゴの外来種問題

 

個体数を増やしたミノカサゴは在来種を駆逐する勢いで捕食し、その中にはサンゴに付着した藻類を積極的に食べる、植物食性が強い種類も含まれていました。藻類を食べて除去してくれる魚種を失ったサンゴは藻類に覆われ白化、つまり死んでしまうためサンゴ礁の生態系が破壊されてしまうのです。

 

ミノカサゴ移入の一因に、飼育されていた個体の放流が挙げられています。このような事態を招く恐れがあるため、 外来生物の放流は決して行ってはいけません。

ミノカサゴは「綺麗な花には棘がある」を体現する魚!

ミノカサゴは毒のある美しい魚

 

ミノカサゴは綺麗な色彩と、大きい胸鰭をヒラヒラさせてゆったりと泳ぐ様から非常に優雅な雰囲気をまとっていますが、一部の鰭に強力な毒針を備えているという、まさに「綺麗な花には棘がある」を体現している魚です。

 

この派手な色彩は警戒色であると言われ、「自分は毒を持っている」、「危険な魚だぞ」ということを周囲に知らせる役割があります。人にとっては興味を引く綺麗な色であっても、他の生物には危険に見えるというのも面白い話ですね。

ミノカサゴの生態や見分け方を解説